「選挙前は弱く、通過後は強い」は本当か? 米国中間選挙を投資家目線で徹底解剖

「選挙前は弱く、通過後は強い」は本当か? 米国中間選挙を投資家目線で徹底解剖

株式・投信

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公開日

2026.10.27

  • ※本コラムは手塚宏二事務所が執筆し、当社が情報提供するものです。

11月3日は、米国の中間選挙です。

相場の世界には「中間選挙の年は、選挙前に弱く、選挙後に強い」という有名なアノマリーがあります。ところが今年は、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ、物価の上振れ、原油の100ドル超え、AI関連株の急落が重なるという、過去にあまり例のない環境で選挙を迎えます。

今回は、中間選挙の基礎知識から過去の株価、今回の見どころ、そして投資家の動き方まで、順に整理していきます。

そもそも「中間選挙」とは何か

中間選挙は、大統領の任期4年の折り返しに行われる連邦議会選挙で、政権への「中間評価」という色合いが濃く出ます。

2026年は11月3日(火)に投開票があり、下院435議席のすべてと、上院35議席が争われます。

議会は予算、税制、債務上限を握っているので、「大統領の政策をどこまで通せるか」を決める選挙だと言えます。

大統領選挙 中間選挙
選出対象 大統領・副大統領 連邦議会(下院は全議席、上院は約3分の1)
任期 4年 下院2年、上院6年
争点 大統領個人と政策の方向性 現政権への評価と、議会の力関係

いまの上院は、共和党53、民主党45、民主党と会派を組む無所属2です。(2026年10月時点)

改選では民主党が13議席、共和党が22議席を守る立場で、地図の上では共和党に有利との見方があります。民主党が過半数の51議席に届くには、純増で4議席が必要です。

民主党と共和党の違い

ごく大づかみに言うと、共和党は「成長と減税、規制緩和」、民主党は「家計の負担軽減と、規制への目配り」を重視します。

分野 共和党 民主党
税・財政 減税など、成長と投資を後押し 物価高への対応など、家計の負担軽減を重視
関税 関税で国内産業を守る 基幹産業は守りつつ、一部の消費財は引き下げもあり得る
規制 金融やエネルギーを中心に緩和 金融・環境・大手テックなどへの監視を重視
エネルギー 化石燃料の開発、AI向けの電力 再生可能エネルギーの支援
AI 投資と拡大を優先 監督の強化を検討

ただし、米国株は1945年以降、どちらの党の大統領の下でも、ほぼどんな議会構成の下でも上昇してきました。政党の色だけで相場を語るのは危ういと思います。

なぜ市場は選挙に注目するのか

株式:与党が両院を握れば政策は通りやすく、ねじれ議会になれば大型法案は通りにくくなります。ねじれは「悪材料」でも「好材料」でもなく、政策にかかるブレーキです。企業の業績見通しは、税制や関税、規制に左右されるため、その前提が変わりうる選挙に注目が集まります。もう一つの理由は、結果が出ること自体が「不確実性の解消」になることです。

ドル円:選挙が為替を直接動かすわけではありません。道筋は、次の通りだと考えています。

議会の構成 → 財政・関税政策の見通し → 米国の長期金利 → 日米の金利差 → ドル円

たとえば財政拡張が続くという見方が強まれば、国債の増発懸念から長期金利に上昇圧力がかかり、ドル高円安の材料になります。ただし財政不安が強すぎれば、逆にドルが売られることもあり、一直線にはつながりません。為替の主役は、あくまでFRBと日銀の金融政策です。

日本の投資家は時間帯にも注意が必要です。日本時間11月4日は、米国の株式市場が開く前に、為替や株価先物が先に動き、取引が薄いなかで値動きが大きくなりやすい時間帯です。

過去の中間選挙と株価

ある調査では、1962年以降、中間選挙の年は毎回、8月中旬から投開票日までのあいだに株価が下げ、その平均下落率は8.1%でした。一方、選挙後は強い傾向があります。1900年以降の調査では、選挙後12カ月の平均リターンは12.4%、別の調査では、1938年以降の95%の期間で、選挙後12カ月の株価は上昇しています。

では、直近5回はどうだったのでしょうか。選挙があった月の株価(S&P500の月間平均)と、その3・6・12カ月後を比べてみました。

選挙 議会の結果 3カ月後 6カ月後 12カ月後
2006年 民主党が上下両院を奪還 +4.0% +8.8% +5.4%
2010年 共和党が下院を奪還 +10.2% +11.6% +2.3%
2014年 共和党が上院を奪還 +1.8% +3.3% +1.8%
2018年 民主党が下院を奪還 +1.2% +4.8% +14.0%
2022年 共和党が下院を奪還 +4.1% +5.8% +13.8%
  • ※月間の平均値で比べた、配当を含まない価格ベースの数字です。選挙日の終値で測ると、数字は変わります。

5回すべてでプラスでした。ただし中身には差があり、12カ月後は2010年が+2.3%、2014年が+1.8%と小幅で、5回の平均は約+7.5%と、長期平均よりは控えめです。

しかも、民主党の勝ちでも共和党の勝ちでもプラスでした。2018年は年間でマイナス(配当込みで約−4%)、2022年は急ピッチの利上げのなか、1月から10月12日までに約25%下落しています。

振り返ると、どの回も、選挙の結果よりも金融政策と景気が相場を決めていたように見えます。中間選挙の年のリターンは、約27%の下落から約40%の上昇まで幅広い、という統計もあります。「選挙後は上がりやすい」とは言えても、「必ず上がる」とは言えません。

今回の情勢

大勢は「民主党が下院を奪還し、上院でも民主党が優勢」との見方があります。

10月18日時点の予測市場(『Polymarket』のデータ)では、下院が民主党91%、上院が65%でした。選挙予測モデルでも、同日時点で下院85%、上院60%です。上院のほうが確率が低いのは、接戦州の読みが割れているからで、「優勢」は確定ではなく傾向にすぎません。背景には、大統領の支持率が低迷し、とくに経済運営への評価が厳しいことがあります。

注目の接戦州

(世論調査の平均選挙予測モデル『Poliwave』のシミュレーション10月18日時点)

  • テキサス:民主党が約2.5ポイントリードしています。
  • オハイオ:本来は共和党有利ですが、民主党が約3.1ポイントリードしています。
  • アイオワ:民主党が約0.7ポイントリードする接戦です。
  • メイン、アラスカ:世論調査の平均では共和党がわずかに先行(メイン0.6ポイント、アラスカ2.0ポイント)ですが、調査は9月と古く、予測モデルは民主党がわずかに優勢と見ています。
  • ネブラスカ:無所属候補(46.2%)に対し、共和党(47.6%)がやや先行しています。
  • ※記載の数値は『Poliwave』による予測値であり、実際の選挙結果を示すものではありません。

市場が注目している政策テーマと、足元の相場

今回は、選挙の勝ち負け以上に、選挙後にどの政策が動くか、そして足元の相場が何に揺れているかが重要だと思います。

関税・通商政策

トランプ政権の2期目に入って、通商政策はほぼ常に変動してきました。企業の投資や調達、インフレ期待に直結します。

金利とインフレ

9月16日、FRBは政策金利を0.25%引き上げ、3.75〜4.00%としました。利上げは2023年以来で、投票は全員一致です。続く10月14日の9月の消費者物価は前年比+3.7%、15日の9月の卸売物価(生産者物価)は前年比+6.3%と、強い数字が続きました。10月27〜28日のFOMCでの追加利上げの確率は、約2割から14日に5割前後まで跳ね上がりましたが、16日にFRBのウォーシュ議長が追加利上げを示唆せず「会合を事前に決めつけない」と述べ、15〜17%まで下がりました。それでも12月までには、8〜9割の確率で追加利上げが織り込まれています。米10年金利は、14日の5.3%台から16日は5.10%に下がりました。

財政赤字と予算

財政赤字は2027〜28年も対GDP比で6%前後かそれ以上との見方があります。9月に成立した暫定予算の期限は12月11日で、選挙後に、予算をめぐる対立や政府機関の閉鎖が起きる可能性が指摘されています。

AIと半導体

AI投資は今年の株式市場を支える柱でしたが、投資の持続性や資金調達への不安から、先週は半導体株が大きく売られました。半導体株の指数は8営業日続落し、1週間で約11%下落、ナスダックも週間で4.5%下げています。ウォーシュ議長も、AIによる経済の変化は、大きく変動する展開になり得ると警告しました。

エネルギーと中東情勢

イランによるホルムズ海峡周辺のタンカー攻撃が続き、原油は急騰しています。WTI原油は16日に101.41ドルで取引を終え、ブレント原油は一時110ドルを付けました。9月の消費者物価では、ガソリンが前月比9%上昇し、上昇分の半分以上を占めています。歴史的には、ガソリン価格が上がった選挙サイクルでは、与党の下院議席の減少が平均32議席と、下がった年の6議席より大きくなっています。

投資家はどう動くか

ここからは私自身の考え方です。特定の売買をおすすめするものではなく、「何を見て、どう判断するか」の道筋としてお読みください。

選挙結果を当てにいくのは、プロでも分の悪い勝負です。予測市場の確率は、市場参加者の見方がすでに織り込まれた数字なので、「民主党が優勢」と知っているだけでは優位性になりません。大切なのは、結果が出たあとに「どの数字を見て、どう判断するか」を、あらかじめ決めておくことだと思います。

日程

10月27〜28日:FOMC。

利上げ後の初会合です。直近は利上げ観測が後退していますが、物価指標しだいで揺れる可能性があり、選挙より先に相場の向きが決まるかもしれません。

11月3日(日本時間4日):投開票。

日本は文化の日で東京市場は休場のため、東京市場は4日にいきなり結果を織り込む形になります。

12月8〜9日:FOMC、そして12月11日:暫定予算の期限。

シナリオ別の見方

シナリオ 市場が最初に考えそうなこと 注意したい点
民主党が両院を制す
(63%)
関税や財政拡張に歯止めがかかる 織り込み済みなら反応は小さい。予算をめぐる対立は増える
下院は民主、上院は共和
(28%)
法案が通りにくい「典型的なねじれ」 方向感が出にくく、FRBが主役のまま
共和党が両院を維持
(9%)
政策継続への期待が復活 予想外ゆえ初動の振れが大きい。財政拡張で債券市場には負担

確率は10月18日時点の予測市場のもので、「下院は共和、上院は民主」(1%)は省いています。最も高い確率で示されている「民主党の両院制覇」は、すでにかなり織り込まれている可能性があり、値動きのきっかけになるのはサプライズだと私は考えています。

見るべき指標は4つ

米10年金利

今年の株価を考える上では選挙結果より重要だと考えています。5%を超える高い水準(16日は5.10%)にあり、選挙後にさらに急に上がるなら、株価の戻りは鈍りやすくなります。

S&P500の史上最高値(終値で7,822.72)の更新と定着

16日の終値は最高値を約2.1%下回っています。一時的に超えても、数日で押し戻されるなら警戒は解けません。

原油(WTI)

100ドル台は、ガソリン価格を通じて、物価と有権者の心理の両方に響きます。インフレが続くほど、FRBの利上げ観測も戻りやすくなります。

ドル円

選挙の速報より、FOMCの声明と米国の金利の動きを優先して確認したいところです。19日朝は157円台後半でした。

スタイル別の考え方

長期・積立の方は、選挙を理由に売買のルールを変える必要はないと思います。中短期で売買する方は、10月28日のFOMCと11月4日の東京市場の前後で、ポジションを普段より軽めにし、損切りの水準を決めておくのが基本です。結果が出た直後の初動に飛びつかず、数営業日の値動きが定着するかを確認してから動く、という考え方もあります。

避けたい落とし穴は、アノマリーだけを根拠に大きく賭けること、予測市場の確率を確定した事実のように扱うこと(63%は、37%で外れるということです)、そして選挙の結果が、そのまま政策の実現につながると考えることです。

チャートで確認したいポイント

注目すべきS&P500の数字は、次の通りです。

  • 史上最高値の終値:7,822.72(10月6日)。日中の最高値は7,844.52
  • 10月16日の終値:7,659.44(年初来+11.9%)。この日は1.1%下落し、週間では約1.9%の下落と、6月以来の悪い週になりました
  • 今年の安値:6,343.72(3月30日)

10月6日に最高値を更新したあと、物価指標、AI関連株の急落、原油高が重なって押し戻された形です。日本でも、19日の東京市場で日経平均が前引けで790円安の64,534円となり、一時は1,400円超下げました。最高値の更新と定着、反落が続く場合の下値の目安、10年金利やドル円との組み合わせを、講師の相場観で補っていただくと、一段と実践的になると思います。

まとめ

  • 「選挙前は弱く、通過後は強い」という傾向はあります。直近5回も、選挙後12カ月は5回ともプラスでした。ただし幅は大きく、「必ず大きく上がる」わけではありません。
  • 相場の主役は、議会の勢力図より金利・インフレ・業績です。今年はそこに、利上げ、物価の上振れ、原油高、AI関連株の急落が加わりました。
  • 民主党優勢との見方は、一定程度織り込まれている可能性が高く、値動きの源はサプライズでしょう。
  • 選挙の前に10月27〜28日のFOMC、選挙の後に12月8〜9日のFOMCと12月11日の予算期限があります。見るべきは「米10年金利」「最高値の定着」「原油」「ドル円」の4つです。

選挙結果に一喜一憂せず、結果が出たあとの判断の手順を、いまのうちに決めておく。それが、この秋にいちばん大切な備えだと思います。

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著者

小次郎講師

投資教育家・チャート分析家
所属:手塚宏二事務所

小次郎講師(本名:手塚宏二) 投資教育家・チャート分析家。 40年以上にわたりマーケットと向き合い、投資セミナー、書籍、動画、コラムなどを通じて、 個人投資家に向けた投資教育を行っている。 難解に思われがちなチャート分析を、初心者にもわかりやすく体系立てて伝えることを得意とし、 これまでに数万人を超える受講生を指導。 代表的な手法に「移動平均線大循環分析」「大循環MACD」「大循環ストキャス」などがある。

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