著者
中山 星甫
アドバイザー
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公開日
2026.10.20
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2026年7月3日に公表した2025年度の運用実績は、収益額41兆3,995億円、収益率プラス年率16.47%。2020年度以降、6年連続のプラス運用となり、その運用力に改めて注目が集まっています。
ただ、このような報道で語られるのは、主に資産価格の上昇による「キャピタルゲイン」です。
一方で、GPIFの運用資産からは毎年、利子や配当による「インカムゲイン」も安定的に生み出されています。
長期の資産形成において本当に重要なのは、大きな値上がりを狙うことだけではありません。
GPIFの運用実績を手掛かりに、資産を育てるもう一つの考え方を見ていきましょう。
GPIFの2025年度の運用実績を見ると、好成績を牽引したのは、国内株式(収益率+34.62%)を筆頭とする値上がり益でした。
一方で、GPIFの収益は「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」に分けられます。
この2つを年度別に比べると、違いや特徴が見えてきます。
運用実績 [2022年度~2025年度]
| 年度 | キャピタルゲイン | インカムゲイン |
|---|---|---|
| 2022年度 | ▲7,467億円 | +3兆7,003億円 |
| 2023年度 | +41兆2,779億円 | +4兆1,374億円 |
| 2024年度 | ▲2兆9,454億円 | +4兆6,788億円 |
| 2025年度 | +35兆8,792億円 | +5兆5,203億円 |
2022年度・2024年度はキャピタルゲインがマイナスとなった年でした。ところがそうした年でも、インカムゲインは着実にプラスを維持し、むしろ年々増え続けています。
市場運用開始からの累積で見ても、インカムゲイン(61兆3,892億円)は、累積収益額全体(196兆9,306億円)の約31%を占めています。
なお、GPIFの「インカムゲイン」は、「債券の利子収入」と「株式の配当収入」をあわせた金額です。今回は、その中から株式に焦点を当てて見ていきます。
株価は、市場全体の動向に加え、個別企業の業績や市場からの期待、将来の見通しなど、さまざまな要因の影響を受けて変動し、短期的には評価損になることもあります。
一方で配当は企業の業績が急に悪化しない限り、大きくは変わりにくいという性質があります。
相場が急変したときにこそ、こうした配当収入の安定性が資産運用全体を下支えする「土台」としての役割を発揮します。
いざ個別のインカム銘柄を選ぶ段階になると、多くの方が「配当利回りの高さ」だけで判断しがちです。
しかし、同じ利回りでも中身はまったく別物ということが少なくありません。
たとえば、配当利回りがどちらも5.0%の2社(架空企業)を比べます。
A社は配当性向92%で増配実績なし、利益は3期連続減益。
B社は配当性向38%で13期連続増配、利益も緩やかな増益基調です。
配当性向とは、企業が稼いだ利益のうちどの程度を配当に回しているかを示す指標です。
A社は業績が少し悪化するだけで減配リスクを抱える一方、B社は利益の大半を配当に回さず、内部に残すことで、多少の業績変動があってもインカムを継続しやすい状態となります。
この「B社」に近い実例として、上記3つの基準(配当性向の適正さ・増配実績・利益トレンド)をいずれも満たす銘柄が、日本の株式市場にも存在します。
※以下は当該銘柄の勧誘を意図するものではなく、配当継続性を見る際の考え方を説明する事例です。
ここでは、2026年10月時点で日経平均株価の構成銘柄の中から、業種の異なる2社(通信・商社)を選び、KDDI(9433)と三菱商事(8058)を参考事例として取り上げます。
KDDIは、2027年3月期の配当予想が1株84円、配当性向42.8%程度で、25期連続の増配となる見込みです。
三菱商事も、減配を前提としない累進的な配当方針を掲げ、利益成長に応じた増配を目指しており、2025年度の配当は1株110円でした。
いずれも、利回りの高さだけでなく、増配の実績や配当性向の適正さという点で、インカムの持続性を判断する際の参考事例として考えられます。
なお、同様の基準を満たす銘柄は他にも複数存在しており、この2銘柄はあくまで基準を分かりやすく示すための一例です。
インカム銘柄を選ぶ際にチェックしたいのは、次の3点です。
| 配当性向 | 利益に対して無理のない範囲で配当を出しているか |
|---|---|
| 増配・減配の実績 | 継続的に配当を維持・拡大してきた実績があるか |
| 利益トレンド | 配当の原資となる本業の利益が安定・成長しているか |
多くの方のポートフォリオは、成長期待の高い銘柄に偏りがちです。
値上がり局面ではそれで問題ありませんが、相場が急変したときに、ポートフォリオ全体を支える「もう一つの柱」を持っておくことには意味があります。
世界最大級の年金基金が、値上がり益の陰で地道にインカムを積み上げてきたという事実は、値上がり期待だけに偏らないポートフォリオづくりのヒントになるのではないでしょうか。
値上がり益と配当のバランスはご自身のリスク許容度やライフプランによって適切な形が変わってきます。
今の資産配分がその両方に照らし合わせて無理のないものになっているかどうか、一度、アドバイザーと一緒に確認してみてはいかがでしょうか。
証券アナリスト・FP最上位資格を活かし、ポートフォリオ分析とリスク管理を起点にお客さまの長期運用をアシストします。
株式・債券・投資信託をはじめとする多様な商品をご提案してきた経験を活かし、お客さまの目的やリスク許容度に応じた最適な資産形成をサポートいたします。
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