2000年型“3段階崩壊”か、2004年型“軟着陸”か。岡崎良介氏に聞く「10月相場」と日本株選びの「3つのフィルター」

2000年型“3段階崩壊”か、2004年型“軟着陸”か。
岡崎良介氏に聞く「10月相場」と日本株選びの「3つのフィルター」

株式・投信

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公開日

2026.10.02

日米の金融政策会合、11月3日の米中間選挙をにらんだ駆け引き、そして主要企業の決算発表――。

重要イベントが集中する2026年10月のマーケットを、投資家はどう乗り切るべきでしょうか。

現在の半導体株(SOX指数)とS&P500の極端な乖離について、岡崎良介氏は「これまでの歴史において、2000年あるいは2004年の相場に非常に似ている」と分析します。

相場は初期波動を経て全滅へ向かうのか、それとも時間差での調整・軟着陸(ソフトランディング)となるのか。

日米の政治・金融の裏側に潜む思惑から、これからの日本株選びに不可欠となる「3つのフィルター」、そして個人投資家が守るべき資産運用のアプローチまで、秋の相場と向き合うためのヒントを伺いました。

(聞き手はQUICK Money World)

  • ※取材は9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される前に実施しました。

SOX指数とS&P500、異例の乖離 「3段階崩壊」か「軟着陸」か

――2026年のここまでの相場について、過去のどのような局面と重なりますか。

「2026年の足元の相場には、非常に似ている時代が2つあります。1つは2000年、もう1つは2004年です。足元で半導体株指数(SOX指数)がピークから29%も大暴落した一方で、同じ期間のS&P500は2%しか下がりませんでした。このように
S&P500とSOX指数が極端な倍率で乖離する現象は、これまでの歴史において2000年と2004年しか存在しません」

「2000年の『ITバブル崩壊』は一括りに語られがちですが、実は初期波動ではS&P500は下がらなかったのです。当時は年初にSOX指数が20%以上も急落したにもかかわらず、S&P500は5%程度しか下がりませんでした。しかしその後、相場は3つの段階を経て、最終的にS&P500が50%暴落する大底へと向かったのです。まず第1段階として2000年3月にピークアウトしたITバブルの崩壊(IT関連株の暴落)が始まり、第2段階として米国同時多発テロ(9.11)が発生し、そして第3段階としてエンロンやワールドコムといった大手米企業の不正会計事件が追い打ちをかけました」

「一方の2004年もSOX指数が急落したものの、S&P500はビクともしませんでした。当時はサブプライムローンに代表される米不動産バブルが絶好調であり、バブルの発生源が半導体と離れていたため、本格的な崩壊(リーマン・ショック)に至るまで約4年のタイムラグが生じたのです。今回の「生成AIバブル」が半導体関連だけを指すものであれば2000年型を踏襲して全滅に向かう懸念がありますし、より大きなフレームワークであるならば2004年型のように軟着陸(ソフトランディング)や時間差での調整となる可能性があります」

日米摩擦の記憶を呼び覚ますベッセント長官の焦り 利上げ催促の真意

――日米の金融政策や政治については、どのように分析されていますか。

「政治・外交面での緊迫感は、1993年4月にビル・クリントン米大統領と宮澤喜一首相が行った日米首脳会談の凄まじい雰囲気を思い出させます。当時、日米包括貿易協議が物別れに終わり、クリントン大統領は恐ろしいほど怖い顔で宮澤首相を睨み、記者会見では絞り出すような怒号に近い声で語りました。その瞬間に市場は激しい円高の渦に巻き込まれたのです」

「現在のスコット・ベッセント米財務長官の言動を見ても、トランプ大統領から『長期金利を引き下げろ』とプレッシャーを受け、非常に焦り追い詰められている印象を受けます。ベッセント長官は米20年国債のバイバック規模を従来の20億ドルから60億ドルに急増させましたが、超長期金利はビクともしませんでした。力づくの市場コントロールには限界が見えています」

「さらにベッセント長官は、日本に対して『リフレ政策をやめて正しく利上げせよ』と強く催促しています。詳しく読み解くと『アベノミクスはリフレ政策だった。デフレ脱却までは正しかったが、高市さんはデフレ脱却の宣言もしていないのにインフレ補助金を出して見かけ上のCPIを下げている。そんなフェイクはやめて正しく利上げしなさい』ということです。日本が応じなければG7からの排除や関税措置といったリスクすら孕む深刻な摩擦へと発展しかねません。日銀が9月・10月・12月の連続利上げや0.5%幅の利上げに踏み切れば、市場想定以上のショックを与えます。一方の米連邦準備理事会(FRB)は、AI関連セクターの賃金上昇がCPIの家賃(スティッキー物価)を押し上げているため利下げの選択肢がなく、現状維持か利上げかの厳しい局面にあります」

10月相場のアノマリー 中間選挙前に相場は落ち着くも、決算が波乱要因か

――金融政策や米中間選挙、決算発表が集中する10月相場をどう読み解きますか。

「10月相場を乗り切る上では、特有のアノマリー(経験則)を理解することが重要です。1970年以降の米中間選挙年(過去14回)のデータを分析すると、政策不透明感から9月にS&P500のボラティリティ(変動率)が極めて大きく高まり、直前の10月には材料出尽くしとなり、相場の変動が落ち着くというパターンを描きます。FRBも11月の中間選挙直前である10月に金利を変更する可能性は低く、動くなら9月か12月になるはずです」

「企業業績に目を向けると、7月の米小売り統計の悪化は6月のAmazonプライムデー(セール)の反動であり過度な懸念は不要ですが、8月の建設支出は非常に悪く、住宅や製造業向け設備投資の落ち込みが目立ちます。MetaやOracleのようにバランスシートに対して過剰なAI設備投資を続ける企業や、ピークアウト感が強まる半導体メモリー分野は、決算次第で大きく売られるリスクを警戒すべきです」

日本株選びは「3つのフィルター」で 高値を更新できる企業の条件

――国内株についてはいかがですか。

「これからの日本株選びにおいては、①日銀の積極的な利上げ、②円安頼みからの脱却、③リフレ政策の限界(安易に値上げできない)という『3つのフィルター』を通すことが不可欠です。SOX構成30銘柄の中で、指数が大きく下げた後、高値を更新できたのはエヌビディアだけでした。日本株でも世界トップクラスの検査技術を持つアドバンテストのような真に優良な企業しか高値を更新できていません。半導体に限らず、どんなセクターでも世界基準の強みを持つ『クオリティの高い企業』を厳選する必要があります」

機関投資家が抱える「ストップ安」の弱点 株式分割で個人の参入を

「日本の半導体株や優良株が成長しきれない最大の原因は、1株あたりの値段の高さです。株式分割が進まず1株あたりの投資金額が高額なまま放置されているため、数万円程度から投資したい個人投資家がなかなか参入できません」

「個人投資家というクッションを欠いた市場は、機関投資家同士だけの偏った取引環境になります。しかし、機関投資家(投資信託のファンドマネジャー等)には『ストップ安に極めて弱い』という決定的な構造上の脆弱性があります。例えば、半導体株を大量に組み入れているファンドで、保有銘柄が2日連続でストップ安を付けた日に投資家から解約請求が来ると、株を売却して現金化することができずファンド自体がパンクしてしまいます」

「売買が成立しない流動性の薄い市場では、いくら時価総額が大きく業績がピカピカな優良企業であっても、一度ストップ安になると売るに売れなくなります。この『売却不能に陥る恐怖』があるため、機関投資家は怖くて二の足を踏み、買いたい銘柄があっても手を出せなくなるという悪循環が生じています。ストップ安のリスクに耐えられるのは一部の個人投資家や年金、生命保険等に限られます」

「だからこそ日本取引所グループ(JPX)は、株式分割を促して投資単位を10分の1程度に切り下げ、1万〜2万円程度から個人投資家が参入できるようにすべきです。無数の個人投資家が小口で日常的に売買に参加し、流動性の層が厚くなってはじめてマーケットは正常に機能し、ストップ安のショックも緩和され、機関投資家も安心して投資できるようになります」

走り出したバスに焦って飛び乗るな 「絶対に溶かせないお金」の線引きを

――イベントが集中して相場が動く時期に、個人投資家がやってしまいがちな『失敗パターン』はありますか?

「最もやってはいけない失敗は、イベントの順序を考えず、走り出したバスに焦って飛び乗ってしまうことです。イベントには順番があります。例えば、『米中間選挙の直前だから10月は利上げできない、9月がないなら10月もないか』というように、整理すればシナリオが描けますね。そこを、イベント1つだけを見て、焦って売買してしまうのがよくある失敗かな、と思います。バスはまた来ますから。焦らないことが大事です」

――最後に、個人投資家へのメッセージをお願いします。

「金利が復活した現代において最も重要なのは、家計簿やライフプランを改めて見直し、マイホームの頭金や教育費、老後資金等『絶対に溶かしてはいけないお金』のラインを明確に定めることです。独身の若い人たちは、ある程度リスクをとった運用も可能でしょう。挽回するチャンスはたくさん来るでしょうから。しかし、家庭を築いて子供ができたり、マイホームの夢が具体化する等、それぞれのライフプランが明確になった瞬間に、資産運用には『絶対に溶かしてはいけないお金』が出てきます。ライフプランを達成するためにこれだけは絶対に溶かさないようにしようという発想が必要です。その一線をしっかりと引き、絶対に溶かせない資金を防衛した上での資産運用を徹底することが、大事だと思います」

10月14日のセミナーでは、日米の最新動向や『クオリティの高い企業』をどのように選別していくのかといった戦略について解説していただきます。どなたでもご参加いただけますので、ぜひお申込みください!

【オンラインセミナー開催のお知らせ】
QUICK Money WorldとOliveコンサルティングは、2026年6月から2027年3月にかけて全10回の共同オンラインセミナーを開催します。第5回のテーマは「米中間選挙、日米金融政策の見通しとマーケット戦略」です。
テレビやラジオ、YouTubeなどで人気の金融ストラテジスト岡崎良介氏を講師に迎え、金利の上昇で目が離せない日米の金融政策や、米中間選挙を控えた株式市場の動向、年末に向けてのマーケット見通しをお話ししていただきます。第二部では岡崎氏、Oliveコンサルティングの岩﨑貴久氏とフリーアナウンサーの杉本晶子氏に、投資家の悩みや不安をサポートするOliveコンサルティングのサービスについてお話しいただきます。

開催日時:2026年10月14日(木)19時開始(20時終了予定)
開催方式:Zoomによるオンライン配信
費用:無料(申込が必要です)

セミナーの詳細、お申込みはこちら

  • ※お申込みは終了しました。

講師

岡崎 良介

金融ストラテジスト

1983年慶応大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村證券投資信託委託(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセットマネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンド等の運用に長く携わる。独立系資産運用会社の設立に運用最高責任者(CIO)として参画した後、2012年、独立。2013年GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ・ジャパン客員フェロー就任。日経CNBC、マーケット・アナライズ(BS12)、マーケット・アナライズ・プラス(ラジオ日経)等のレギュラー・コメンテイターを務めている。

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