監修者
續 恵美子
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公開日
2026.08.18
遺産相続では、死亡届の提出や相続放棄・限定承認の判断等複数の手続が必要になります。その多くは期限が設けられているため、あらかじめどのような手続をいつまでに行うのか把握しておきましょう。必要に応じて専門家に手続代行を依頼するのもおすすめです。
遺産相続手続の流れは、遺言書の有無等状況によって異なります。手続には一定の期限もあるため、あらかじめ大まかな流れを確認しておきましょう。
本記事では遺産相続の基礎知識や手続の流れをまとめました。
遺産相続とは、亡くなった方の財産等の権利・義務を残された家族等が引き継ぐことです。相続は遺言書の有無等によって以下3つに区分されます。
| 法定相続 | 遺言相続 | 遺産分割協議 | |
|---|---|---|---|
| 概要 | 民法の規定にしたがい分配 | 遺言書の内容にしたがい分配 | 相続人全員の話し合いで決定 |
| 遺言書 | なし | あり(最優先) | なし |
| 柔軟性 | 法定割合のみ | 原則として、被相続人の意思で自由 | 全員合意で自由 |
遺言書がある場合は遺言相続が最優先となりますが、ない場合は相続人同士で話し合って決める遺産分割協議や、民法の定めに則って分割する法定相続が採用されます。
遺産相続において、亡くなった方の配偶者は常に相続人になります。
一方、配偶者以外の親族(血族相続人)は、相続人の範囲と順位が決まっています。第1順位として、子がいる場合は子が相続人になりますが、子がいない場合は第2順位として亡くなった方の親が相続人になります。子も親もいない場合は亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になります。
なお、被相続人に認知された非嫡出子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子)や養子縁組みをした子(配偶者の連れ子等)は、被相続人の実子と同じく相続人です。それぞれの相続分は以下の通りです。
| 相続順位 | 相続人になる人 | 法定相続分 |
|---|---|---|
| - | 配偶者のみ | すべて |
| 第1順位 | 配偶者と(亡くなった方の)子 | 配偶者:1/2 子:1/2 |
| 第2順位 | 配偶者と(亡くなった方の)親 | 配偶者:2/3 親:1/3 |
| 第3順位 | 配偶者と(亡くなった方の)兄弟姉妹 | 配偶者:3/4 兄弟姉妹:1/4 |
同順位の相続人(子または親、または兄弟姉妹)が複数人いる場合は、その人数で均等に分割します。
なお、代襲相続といい、相続人となるはずの子または兄弟姉妹がすでに死亡している 場合は、以下の人が当人に代わって相続人になります。
| 子が死亡している場合 | 孫 |
| 兄弟姉妹が死亡している場合 | 甥・姪 |
遺産相続手続の多くは以下のような期限が設けられているため、なるべく早めに手続に着手する必要があります。
| 期限 | 主な手続 | 届出先・依頼先 |
|---|---|---|
| 7日以内[注1] | 死亡届の提出、火葬許可証の取得 | 市区町村役場 |
| 原則として14日以内 (厚生年金の場合は10日以内)[注2] |
年金・保険届出、遺言書確認、公共料金等停止 | 各窓口 |
| 3ヵ月以内[注3] | 相続人確定、財産調査、相続放棄・限定承認の判断 | 家庭裁判所(放棄・限定承認時) |
| 4ヵ月以内[注4] | (被相続人の所得税の) 準確定申告・納税 | 税務署 |
| 10ヵ月以内[注5] | 遺産分割協議・相続税申告と納付・名義変更 | 税務署・法務局・金融機関 |
| 1年以内[注6] | 遺留分侵害額請求の期限 | 家庭裁判所 |
[注1] e-Gov法令検索「戸籍法」
[注2] 日本年金機構「年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。」
[注3] 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
[注4] 国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
[注5] 政府広報オンライン「知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】」
[注6] e-Gov法令検索「民法」
被相続人が亡くなったら、7日以内に死亡届の提出および火葬許可証の取得を行う必要があります。火葬許可証の取得は法定期限は設けられていませんが、実務上、死亡届の提出と同時に行うのが一般的です。
年金や生命保険等の届出、遺言書の確認、光熱費や電話代といった公共料金の停止、あるいは契約者変更等の手続等も速やかに行うようにしましょう。
また、葬儀の手続も並行して行うことになりますが、葬儀にかかった費用は相続税申告にて控除対象になるため、領収書はきちんと整理・保管しておく必要があります。さらに経営者の方が亡くなった場合は、代表取締役の変更登記手続や後任者の要件確認も必要になります。
亡くなった方が遺言書を残していないかどうか確認します。遺言書には遺言者自らが作成する自筆証書遺言と、公証人が作成する公正証書遺言がありますが、前者の場合は未開封の状態で家庭裁判所に遺言書を提出し、検認を受けなければなりません。
ただし、自筆証書遺言書が法務局で保管されていた場合は家庭裁判所での検認は不要です。
これと並行して、相続人を確定させるための戸籍謄本収集や、相続財産の洗い出しを進めます。
なお、相続放棄または限定承認を選択する場合は相続の開始があったことを知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。限定承認とは、被相続人の債務がどの程度あるか不透明で、剰余財産が生じる見込がある場合等に、取得した相続資産の限度内で被相続人の債務負担を引き受けることです。
準確定申告とは、年の中途で納税者が死亡した場合、本来、死亡した人が納めるべき所得税を相続人が代わりに確定申告および納税する手続のことです。
たとえば経営者や不動産所有者が年の中途で死亡した場合、役員報酬や不動産所得等を申告・納税する必要があります。相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内に、1月1日~死亡日の間に確定した所得額および税額を計算・申告します。[注7]
遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合う遺産分割協議を行い、誰が何を相続するのかを記載した遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は相続税の申告や財産の名義変更等に必要なもので、相続人全員分の実印捺印および署名が必要になります。
相続税は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算した基礎控除額を差し引いた分に課税されます。[注8]たとえば法定相続人が配偶者と子1人の2人だった場合、相続財産の合計が3,000万円+600万円×2人=4,200万円を超えたら申告が必要です。
相続税の申告は、相続の開始があったと知った日の翌日から10ヵ月以内に、被相続人の死亡時における住所地を管轄する税務署に対して行います。
遺産分割協議書を作成したあと、各人が受け継ぐ財産の名義変更が必要になる場合には、できるだけ速やかに手続をしましょう。
[注8] 国税庁「No.4152 相続税の計算」
遺産相続手続に必要な書類は以下の通りです。
| 手続 | 必要書類 | 取得先 |
|---|---|---|
| 相続人の確定 | 被相続人の出生〜死亡の連続戸籍、相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村役場 |
| 遺産分割協議 | 遺産分割協議書、印鑑登録証明書(全員分) | 自作(署名・実印) |
| 不動産の相続登記 | 登記申請書、固定資産評価証明書、登記簿謄本 | 法務局 |
| 預貯金の名義変更 | 残高証明書、通帳、届出印 | 各金融機関 |
| 相続税の申告 | 相続税申告書、財産評価明細書 | 税務署 |
なお、戸籍謄本は改正戸籍法により、令和6年3月1日(金)より本籍地以外の市区町村窓口でも請求が可能になっています。[注9]
名義変更や解約の手続方法を財産別に解説します。
被相続人の預貯金の解約・払い戻しは、各金融機関の窓口にて行います。その際、遺産分割協議書や口座名義人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本および印鑑登録証明書等の書類が必要です。
不動産を相続したら、法務局(登記所)にて相続登記手続を行います。不動産の相続登記は2024年4月より義務化されており、不動産を相続したことを知った日から3年以内に手続しなければなりません。申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象となるので注意しましょう。[注10]
相続登記は自分で行うことも可能ですが、必要書類の収集には手間と時間がかかる上、申請手続には登記制度に対する知識も必要になります。効率化やミス防止のためには、相続登記の専門家である司法書士に依頼することをおすすめします。
相続した有価証券や投資信託の名義を変更し、相続人の証券口座に移管する手続を行います。
相続人が証券会社の口座を持っていない場合は新たに開設する必要があります。
遺産相続手続は相続人自身で行うことも可能です。しかし、会社経営者をはじめ富裕層の方々の多くは、相続財産の種類が多岐にわたり金額も大きいため、相続財産の調査・特定が困難だったり、評価額の計算が複雑だったりする傾向があります。遺産分割協議や遺産分割協議書の作成手続にも時間と手間を要することも考慮すると、専門家のサポートを受けるのが有効でしょう。
遺産相続手続を依頼できる専門家ごとの特徴や依頼すべきケースをまとめました。
| 専門家 | 得意領域 | 依頼すべきケース |
|---|---|---|
| 税理士 | 相続税の申告・節税対策・財産評価 | 相続財産が基礎控除額を超える場合 |
| 司法書士 | 不動産の相続登記・戸籍収集 | 不動産がある場合(登記義務化) |
| 弁護士 | 遺産分割の紛争解決・遺留分・調停 | 相続人との間で争いがある場合 |
| 信託銀行 | 遺産整理業務の一括代行 | 手続全体を任せたい場合 |
業務として取り扱いできる範囲が法律で特定されているためでもありますが、上記を見てもわかる通り、それぞれ得意領域が異なります。一方、ご自身の事情やケースに照らし合わせてみると、税理士・司法書士・弁護士等複数の専門家への依頼が必要となることもあるでしょう。そのような場合には、専門家同士によるチームとして相続発生から納税までの一連の手続をサポートしてもらうのがおすすめです。
まずは相続サービスを提供している銀行や信託銀行に相談してみましょう。資産状況の確認や納税資金等に関するアドバイスのほか、チームの司令塔役(窓口)となり、財産の種類や紛争の有無等に応じて税理士・司法書士・弁護士等の専門家と連携したサービスが期待できます。
経営者や富裕層の方が相続手続で注意すべき点を4つご紹介します。
取引相場のない非上場株式の評価方法は以下3つがあります。
| 類似業種比準方式 | 上場している類似業種企業の株価をもとに評価 |
| 純資産価額方式 | 会社の純資産をもとに評価 |
| 配当還元方式 | 1年間の配当金額を一定の利率に還元して株式価額を評価 |
大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式を採用するのが一般的です。
なお、同族株主以外の株主が取得した株式は配当還元方式で評価します。株式は高額評価になるケースが多いため、必然的に相続税の負担は大きくなりがちです。このため、自社株の評価額は事前に計算・把握した上で、しかるべき相続税対策を講じておくことが大切です。
また、複数の相続人に株式を分配すると、議決権が分散して経営が不安定になるおそれがあるため、遺言書で後継者に株式を集中させることも検討しましょう。
事業承継税制とは、自社株を承継する際、贈与税や相続税の納税を猶予あるいは免除を受けられる制度です。制度を利用するためには、特例承継計画を都道府県庁に提出し、認定を受ける必要があります。
この制度には特例措置と一般措置の2種類がありますが、前者であれば全株式が対象、納税猶予割合が100%になる上、複数株主から最大3人の後継者に対して承継できるため、一般措置より優遇されます。
ただし、特例措置の適用に必要な特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日(木)までです。制度の適用期限も令和9年12月31日(金)までとなっているため、あらかじめ注意が必要です。[注11]
また、認定されたあとは5年間にわたって年次報告書を都道府県知事宛てに提出する義務があります。
[注11] 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」
富裕層や経営者は複数の資産を保有しているケースが多いですが、資産の種類によって相続税計算の基礎となる評価方法が異なるため、ひとりで対処するのは困難です。各々の専門家に手続代行を依頼することも検討しましょう。
なお、資産ごとの手続窓口は以下の通りです。
| 資産 | 手続窓口等 |
| 不動産 | 法務局 |
| 有価証券 | 証券会社 |
| ゴルフ会員権 | 運営会社 |
| 自動車 | 陸運局 |
| 美術品 | 専門業者による鑑定が必要 |
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が最低限相続できる割合のことです。もし遺留分が侵害された場合、相続人は遺産を受け継いだ他の相続人に対し、侵害された遺留分を請求することができます。
経営者の場合、事業用資産を後継者に集中させると遺留分を侵害するリスクが高いため、場合によってはトラブルを招く要因にもなるでしょう。
トラブル対策として、後継者が遺贈等で受け継ぐ自社株式について、遺留分に関する民法の特例を用いて遺留分算定基礎財産から除外、または算入価額を合意時の時価に固定し、遺留分の主張を防ぐという手段があります。
また、生前の家族会議で事業用資産の分割方法を共有しておくことも重要です。
遺産相続手続には期限が設けられているものが多いため、相続が開始されたら早めに諸手続に着手しなければなりません。ただし、富裕層や経営者の方は自社株や事業承継等の手続も行わなければならず、ひとりでまかなうのは困難です。必要に応じて各々の専門家に相談し、手続の代行を依頼するとよいでしょう。
記事提供元:株式会社デジタルアイデンティティ
ファイナンシャルプランナー(CFP®、ファイナンシャル・プランニング技能士) 生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。 渡仏後は2年間の自己投資期間を取り、地元の大学で経営学修士号を取得。地元企業で約7年半の会社員生活を送ったあと、フリーランスとして念願のファイナンシャルプランナーに。生きる上で大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談等で活動中。
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